「部活問題」を考える

「部活問題」「ブラック部活」を中心に、現役高校教師Kが学校現場の問題点を考えていくブログです。

今年もやっぱり起きた・・・「熱中症による部活動死亡事故」

ブログの記事にするのも憚られるが

危ないと記事を書いていた翌日に

中学生が熱中症で亡くなったとのニュースがあった。

イムリーすぎて一月ほど記事を書く気力がなくなった。

しかし、日本の部活動問題を現場から訴えていきたい気持ちは

消えるどころかますます強くなったので、改めて記事を検索した。

その後の調査委員会の報告が行われた旨の記事を見つけた。

 

www.asahi.com

 

調査委員会は「指導が不適切だった」と結論付けたらしい。

「ランニング中に水分をとらせなかった」

「通常は30分間なのに、5分長く走らせた」

という点が「不適切な指導」に当たるらしい。

 

専門家による調査の結果なのだから

「不適切な指導」であったのは間違いではないのだろうが・・・

 

 

そもそも

日本列島各地で熱中症警報が出ている時期に

運動をさせたこと自体が不適切な指導ではないか?

 

どんな経緯で「無給水」となったのかは分からないが、

15分ごとに水分補給しなければならない状況で

運動させることは問題ではなかったのか?

5分長く走らせたことが主な死因なのだろうか?

 

気象庁が「運動は危険ですよ」と言っている

時期に部活動させていたこと自体に原因があるのでは?

調査委員会はなぜその点を指摘しないのだろうか?

 

生徒の命が失われたのに

「暑い時の部活動は禁止すべき」と

なぜ文科や教委は言わないのか?

 

 もう一つ、この調査には突っ込みどころがある。

指導が不適切だった、とのことであるが

この副顧問はそもそも運動を適切に指導できる

資格や経験があったのだろうか?

学習指導要領では部活動はあくまで

「生徒の自主的な活動」とされているはずだ。

 

生徒の自主的な活動に付き添って

「指導が不適切だった」と

断じられるからには、

それなりの職責が負わされていたはずだ。

 まさか、競技素人、スポーツ素人の先生ではあるまい。

 

 部活動の指導をするのに何か資格が必要なんて話は聞いたことないが

まさか、運動指導などの

資格や経験がない先生に

指導を押し付けておいて

「指導が不適切だった」と

言っているのではないだろうか?

 

「指導が不適切だった」と結論付けるからには、

その先生(達)が「自らの意思」で「何かあった時は責任を取る」つもりで

「部活動顧問に就任した」のでなければおかしい。

 

「他の部と兼任」とか

ハンドボールはやったことなくても副顧問だから大丈夫」

「若いからなんでもやれるでしょ」

なんてこじつけられて副顧問をさせられた先生だったのなら

この事故が起きた原因は「不適切な指導」だけではない。

「不適切な指導を行いかねない先生を顧問に任命したこと(者)」も

事故の原因の一つではないのか。

あくまで私の推測だが・・・。

 

あくまで想像するしかできないが・・・

 怪我や事故が伴う部活動を

素人に無理やり指導させたのなら

それは指導だけが不適切で

あったのではない。

部顧問を任命した者の判断や

部活動というシステムそのものも

不適切であったということになるはずだ。

 

本当のところは当事者しかわからない。

しかしこの事故は「部活動のシステム」そのものが

根本的な原因にあるのではないか。

 

こんなに若くして命を落とした生徒さんの無念と

お子さんを亡くされた親御さんの気持ちを思うと

胸が締め付けられる。

 

不幸な事故、不適切な指導、という言葉で無く

もっと部活動そのものを見直すべきだと

私は思う。

お盆は連日38度越え。それでも部活は続く・・・

 帰省のために高速道路を使った。途中のSA/PAでは

バスをチャーターして練習試合などに向かうと思われる

部活生の集団を多く見た。

 

 気象情報は連日38度越えの可能性を訴えているにも関わらず

部活動はお盆も休みなく練習が繰り広げられている。

 

 実家の前を地元の中学生がユニフォーム姿で登校していく。

夏休みと言っても、生徒も先生も休みなしだ。

先生はともかく、生徒は平常授業時よりもキツいだろう。

何しろこの気温で何時間もスポーツするのだ。

 

 高校では補習も行われたりして決して「休みモード」ではないが、

それでも夏休みは2学期以降の授業の充実を図るのに良い期間だ。

今後の授業の方針を教科で話し合うことだってできる。

というか、そういったことをせねばならない時期のはずだ。

 

 しかし、相変わらず教師も生徒も「部活Only」である。

校内で「授業」のことをやっている教員は数えるほどだ。

 

 学習がおろそかになりがちな生徒にとっても

この期間にいままでの学習の遅れを取り戻すことだってできるはずだ。

「生徒のために」というのであれば、

部活動と同じ情熱と温度で学力保障をしなくて良いのか?

学力よりも体力が優先されているかのような気になる光景である。

 

 そしてSA/PAでは保護者と見られる方々も目に付いた。

最近の部活動、特に強豪校になれば

保護者が実質的にチームマネージャーとして

行動しなければならない場面がとても多い。

となると結局、子供を部活動に参加させられる保護者は

週末や年末年始・お盆に休みを取って参加できるだけの

時間的・資金的余裕のある方に限られてくる。

 

SA/PAでソフトクリームを片手に談笑しながら歩いている選手達の横で、

ケータイで慌ただしく連絡を取り合っている顧問らしき先生、

そしてこちらも数名でお弁当などの手配を話し合っている保護者会。

 

まるでプロ選手の待遇だ!

 

生徒は試合会場に運んでもらい、

試合や練習をするだけなのではないか。

その他のことはすべて先生(と保護者)が手配してくれるのだ。

これでは「部活しに学校に行っている」と思うのも無理はない。

まあ、実際そうなっている学校ばかりだが・・・。

 

部活動の現状が「自主的な活動」を大きく逸脱しているの

は間違いない、と確信したお盆休みであった。

熱中症で生徒が緊急搬送!でも部活は続く・・・

今年の夏も連日30度を超える猛暑だ。

環境省などのHPを見れば、私のいる地域も

熱中症予報が連日「厳重警戒」or「危険」を示している。

 

環境省によれば「厳重警戒」は

熱中症の危険性が高いので、

激しい運動や持久走など

体温が上昇しやすい運動は避ける。

運動する場合には、頻繁に休息をとり水分・塩分の補給を行う。」

 

ちなみに「危険」

「特別の場合以外は運動を中止する。

 特に子どもの場合は中止すべき。」

とある。

 

もはや日本の夏の暑さは

生徒に運動させてはいけないレベル

ではないのか。

 屋内にいる人ですら熱中症になる危険性がある気温だ。

 

 夏休みに入って、待ってましたとばかりにどの部活も

 連日グラウンドと体育館で長時間練習をしている(させている)。

 とある部は朝から日没まで練習している。

 私が以前インターハイ部を顧問していた時でも

 夏場は3時間程度しか練習させなかった。

 危険だからだ。

 それでもいつ熱中症で部員が倒れるか気が気でなかった。

 

 こんなに暑いのにあんなに練習して危ないなあ、

 と思っていたら、ついに現任校でも

 先日熱中症で部活練習中に生徒が倒れ

 救急車で緊急搬送された。幸い命に別状はなかった。

 

 翌日の職員朝礼で管理職から状況が報告された。

 そして最後に

 「え〜、各部活動の顧問の先生方、

  熱中症対策に十分注意するよう

  生徒への指示をお願いします。」

 歯切れが悪そうに教頭が言った。

 

 え?それだけ!?

生徒が救急車で搬送されるほどの

暑さなのに部活動を一斉中止しない!?

 

 1年で平均500人ほどの人が熱中症により命を落としているのだ。

 若くて体力があるとはいえ、

 生徒が熱中症で死ぬ可能性は十分にある。

 

 なぜ夏の間だけでも、

 部活を中止できないのか?

 何に遠慮をしているのだろう?

 練習時間の確保よりも

 安全性の確保が優先されるべきではないか?

 

 日頃からある意味首尾一貫して

「部活動最優先主義」を貫いているから 

部活を中止するという発想すらない。

生徒の安全よりも部活動をする方が大事らしい・・・。

  

 練習しないと他校に負ける。

 練習しないとサボっているように見られる。

 部活動をしないと生徒がダラける。

 生徒や保護者が納得しない。

 

 こんなことを教師は本能的に感じてしまう。

学校は何でも「横並び」が大好きだから

自分のチームだけ、自分の学校だけ中止なんてできない。

 自分のとこだけ練習をやめたら他のチームに負けてしまう。

 「あそこが2時間ならうちは3時間だ」

 「いやうちは4時間練習するぞ」

 「うちは1日やって差をつけるぞ」

部活動に蔓延する勝利至上主義が、

事態をどんどんエスカレートさせる。

ほとんどチキンレースである。

誰も部活動を止められない。

 

 日頃から、教師も生徒も

 勉強よりも部活動を優先させているからだ。

 全てが部活動を中心に回り始める。

 行き着くところは「生徒の安全よりも部活動が優先」である。

 そのように意図していなくても、

 生徒が倒れた翌日も平然と部活動をさせているのだから同じことだ。

 悲しいことに、毎年どこかで部活動の事故で亡くなっている生徒がいるのに

 「気をつけるよう注意を促してください。」という

 極めてあやふやな指示のみで、今日も部活が行われる。

 

「死んでも銃は手放さないぞ」と叫んだ人もいるが

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 日本の学校「生徒が倒れても部活は中止しないぞ」という状況だ。

 

 夏休みに入り、

 汗だくだくで部活のために登校した生徒に話しかけたら

 「暑すぎて部活が辛いです」

 「1日部活したら1日休みが欲しい」と口々に言っていた。

 

 その競技が好きで、

 自らの意思で入部した生徒たち自身すら

 「やりたくない」と思うような練習を課して、

 誰が得をするのか?

    誰の、何のための部活動なのだろう?

 

生徒も教師も休めない。

誰も止めることができない。

それが部活動の現状である。

 

部活動指導を「適切」に行っている若手教員の例

前回は部活動指導(だけではないが)に追われて

授業どころではなくなっている先生の例を紹介した。

今回は「適切」に部活動指導を行いながら

教科指導力もしっかりと身につけている

若手の話。

 

私が現在の学校に赴任した時、

隣の席の新規採用3年目の先生が 

私が授業の準備を念入りにしているのを見て

「授業って何をそんなに準備する必要があるんですか?」

と聞いてきた。

 

正直驚かなかった。

1に部活、2に部活、3・4も部活で5に事務仕事

という学校ばかりを経験してきたから。

学校現場の多くは「部活動命」である。

 

彼女も新規採用されて以来、

一通りの初任者研修は受けたものの

日々の事務仕事で手一杯。

さらに部活動の指導につきっきりになり(させられ)、

他のベテランも事務仕事と連日の無駄な会議で多忙ゆえ

新人を指導することなくほったらかしていたため

授業の工夫をする、という発想を持つことなく2年を過ごしていた。

 

だが、彼女は悪くない。

 学習指導に加えて部活動指導という

二つの専門的な仕事を無理強いすれば

どちらかが疎かになるものだ。

この学校も「文武両道」をモットーに

「部活動活性化」を目指しているためそれに忠実に従っていたにすぎない。

土日もずっと部活動につきっきりの「熱心な」先生だ。

学校としての優先順位が「部活動ファースト」

なのだから彼女のような先生が多くなるのは当たり前だ。

 

彼女は、最初は私が作った教材などをもらうだけだったのだが、

教材を工夫すると授業がうまくいくことに感動したようで、

そのうち「自分も教材作りができるようになりたい」と言って

積極的に手伝ってくれるようになった。

きちんと準備すれば生徒が寝たりせず、

生徒も先生も楽しく学習が進むことに気づいたのだろう。

 

彼女には、

部活動と一定の距離感を持ち

生み出した時間を使って授業の工夫をするようアドバイスした。

最初はうまくタイムマネジメントできなかったようだが、

次第に、土日のいずれかはオフにしたり、

週の中日に休養日を設けるようになった。

部活動に時間と労力を取られて、

遅れがちだった仕事もかなり早くなった。

 

休日にある自主的な研修にも参加したりして

スキルアップを図ることにもチャレンジしだした。

 

勤務時間外の労働が完全になくなったわけではないが

学級経営、授業、部活動の指導を良いバランスで行っている。

1年で教材作りの大半を任せられるようになり、

次のステップへ進み始めた。

授業のレベルも上がって、生徒の成績が向上しつつある。

 

最初は「もっと部活したい」と

不満を持った部員もいたようだ。

しかし、今年から部員が増え地区大会を勝ち上がって 

県大会へ出場するなどチームの目標は達成しつつある。

 

限られた時間で練習に取り組むため

チームの規律も高いレベルで守られている。

学習時間を確保しているから部員は皆成績も良い。

部員で授業中に寝る者は一人もいない。

 

学校全体は相変わらず「部活動最優先主義」だが

その雰囲気下にあっても個人レベルで頑張っている。

 

部活動を「本来あるべき姿」に戻し

適切な距離感での指導を行えば

このように教師と生徒は変わるのか、と驚いた。

 

悩んでいらっしゃる先生も多いことと思う。

現状変更にはかなりの労力を必要とするだろうが、

休養日の設定や練習時間の削減など

自分が顧問であることを最大限利用して

イニシアチブをとっていくことで

取り組める改善策もある。

 

諦める前に一歩踏み出しましょう。

一気に変わることはなくても

少しずつなら現状変更できることがあるはず。

同僚に負けない、質の高い仕事をしながら

 自分の人生を少しずつ取り戻していきましょう。

部活動への熱狂が引き起こす「授業レベルの低下」

私が勤務する高校も昨日から夏休みに入った。

学期末は忙しかったが他の先生(同じ教科内外を問わず)

の授業を見に行った。

 

まあ、呆れるくらい

どの先生も生徒を「寝させている」

教科を教えるプロでありながらあれだけ生徒を「寝させて」

平気な神経が私には分からない。

何人かの生徒は1時間目から6時間目まで

ほぼ全ての授業で寝ている。

 

しかし、無理もないのだ。

本校の生徒の大多数は連日30度を超える猛暑の中

毎日朝練1時間、放課後の練習2〜3時間、

土日は4時間〜1日練習しているのだ。

 

いくら若いとはいえ、

休みなく部活動に取り組めば

疲れが取れるはずもない。

 

Jリーグの選手でも

1日3〜4時間しか競技の練習はしないという。

 

それ以上やれば「体が壊れる」だろう。

それをまだ体が発達途上の中高生が

日が暮れるのが遅い夏場は

「朝練+放課後練」で

1日3〜4時間スポーツをしている。

常軌を逸したスポーツ熱だと思う。

 

寝させている教師の方も問題だ。

校務や事務処理、各種会議に時間がかかる上に

部活動の指導で長時間拘束される。

 

教材研究(授業の準備)

をする時間がないのだ。

皆、教科書を噛み砕いて説明するだけだ。

50分間解説をするだけである。

若手は特に重たい部活動を押し付けられがちだから

授業の工夫、授業研究などに取り組む余裕がない。

 

そんな若手の授業の観察をしたが、

いずれも見ているだけで苦痛になるような授業ばかり

であった。

本校は最近流行りの

「アクティブラーニング」の研究指定を

受けている「文武両道の進学校」なのだが

各教科の授業の中身はお寒い限りだ。

 

偉そうに言っているが、

私の授業では生徒は寝ない。

寝させない工夫をしている。

そのために授業研究を欠かさない。

土日の研修会にも自費で参加するなど指導力の向上に努めている。

生徒の学力が向上し、学習が好きだと言ってくれることに

充実感を感じている。

ありがたいことに

最近は他県から実践発表のために

呼ばれることも増えてきた。

 

研修会などに若手も誘うのだが

大抵断られる。

「部活動があるので・・・」

が主な理由だ。

(嘘か本当かは置いといて・・・)

 

実は私も部活動は担当している。

誰も顧問をやりたがらない教科系部活動に自ら顧問となった。

文化部だが、決して指導の手は抜いていない。

その証拠に今年広島で行われる

総合文化祭に部員が出場する。

 

総文祭に出場できるレベルを目指した指導を行いながら

適切に休みも設定している。

学習に取り組む時間をきちんと与えてあるから

部員たちは各教科でも成績優秀である。

私自身も主な業務である

教科指導にもきちんと時間を割くことができるよう

練習計画と指導計画を立てているから

私の負担感も少ない。

 

だが、私のような先生は少数派である。

本校では

大多数の顧問と部員が

「部活動(スポーツ)最優先主義」

である。

 

あえて皮肉な言い方をすれば

かなりの数の生徒が

「授業中に部活のための体力を蓄えて」

かなりの数の先生が

「部活動の合間に授業もやる」

という現状である。

 

だからアクティブラーニングとは程遠い

レベルの低い授業が延々と展開されているのだ。

 

「文武両道」と言いながら

実際は「武の道一本」のみである。

 

 部活動そのものが悪いとは思わない。

しかし、部活動への過度な依存が

生徒にも教師にも「悪影響」を及ぼしてしまっている現状があるのは

まぎれもない事実である。

 

部活動は本当に「安価に参加出来る」ものなのか?

ブログを見てくださっている知り合いの先生から

部活動は参加費がかからないから

 貧しい家庭の生徒も参加しやすくて

 学校生活を充実させることができるのでは?」

という意見をいただいた。

 

冷静な意見で確かにそれは一理ある。

部活動は比較的安く運動に打ち込めて

身体を鍛えることができる。

 

もし部活動を民間に開放したら跳ね上がる費用を

負担できずに部活動をできない生徒が増えるだろう。

それが問題だという意見だ。

 

しかし現行の部活動はすでに

「貧しい家庭の生徒は参加できない」

システムになっている。

道具代、遠征費はもちろん

最近はどの種目の連盟も「選手登録費用」なるものまで

徴収し始めている。

 

選手登録費用の他に

「団体登録料」も必要だ。

「監督登録料」も徴収する。

学校によってそれらの資金の出処は異なるが、

部活動を続けるために

選手も監督も金銭的負担を強いられていることにはかわりない。

 

それらの費用負担ができる

家庭の子供のみが

部活動に参加できるのだ。

 

私の知る限り、

経済的困窮家庭の生徒で

「部活をするお金がない」

と言って部活をしない者は多い。

家計を助けるために土日にアルバイトをしている生徒もいる。

部活をしたくてもできない生徒もいるのだ。

 

部活動は比較的安価だが、

すべての生徒の参加を保証できているわけではない。

 

部活に救われる生徒が多数いるのは事実だ。

しかし、部活で救えない生徒がいるのも事実だ。

 

部活に参加できない生徒が肩身の狭い思いを

している現実があるのだ。

 

「文武両道!」「目標部活動加入率100%!」

と学校が言えば言うほど辛い思いをしている生徒がいる。

あくまで自主的な活動であるはずの部活動を

必要以上に「奨励」するからだ。

それに従えない自分の境遇を恨めしく思っている

生徒もいるのだ。

 

部活動が多くの生徒の心のよりどころになっていることは間違いない。

しかし全員の生徒を救えているわけではないことも事実だ。

 

部活動が全ての生徒を幸せにしてできるわけではない。

「部活動はとにかく素晴らしい」という思い込みを捨て、

部活動のあり方を冷静に検討し直すべきである。

部活動の問題点 その4 「スポーツ産業の発達を阻害」

「(子供が)土日家でゴロゴロするくらいなら

 部活でもしてくれた方がいい」とおっしゃる保護者は多い。

私も同意する。確かにその通りだ。

 

しかし、ここにも落とし穴がある。

保護者の立場としては部活動はありがたい。

何しろ

土日もタダで先生が子供の面倒を見てくれるからだ。

 

他人がタダで子供を預かってくれるなんて

こんなありがたいことはない。

私の近所のピアノ教室は週一回1時間のレッスンで一月6000円の月謝だ。

 

公立の保育園に我が子を通わせた時は一月3万6千円であった。

1日あたり1500円である。この計算で土日1日子供を預けると

一月12000円はかかる。

 

他人に子供の面倒を見てもらう(指導もしてもらう)のには人件費がかかるのが世間の常識である。

しかし、教員は実質的に部活動指導に対しては

(ほぼ)タダ働きである。

 

だから部活動は(保護者にとっても)最高である。

「先生に人件費を払う必要はない」のだから。

そりゃあ保護者も「部活をしなさい」と子供に言いたくなるはずである。

日本全国の学校で「部活動推進」が行われる原因の一つだろう。

人件費がかかる、となれば大抵の学校と自治体が慎重になるはずだ。

部活動は人件費がタダみたいなものだから、

学校に特色を出そうとして

何の気兼ねもなく「部活動活性化!」を言い出す。

どの学校も「部活!部活!」と言っているので

逆に特色がなくなってきているのは皮肉だ。

 

しかしタダより怖いものはない。

部活動を教員が「タダ」で運営することには

多くの人が気付いていないデメリットがある。

 

部活動がタダだから「スポーツ指導を受けるのは無料が基準」という社会の雰囲気が形成され、「スポーツ指導にお金を払う」という意識が希薄な社会になってしまっている。

スポーツを指導してもらう、ことに対してお金を払うという感覚がないのでスポーツに関わる業界が成長しない。

 

スポーツで食っていくことができない社会になり、

体育を学んだ人の多くが体育教師になる以外の道がない。

体育教師になれたらまだマシではあるが・・・。

 

その競技へ専門的に取り組み、

全国レベルの競技力を身につけた選手であっても

学校の先生にならない限り「指導者」として活躍できる人は限られている。

 

長年にわたり身につけたスキルを後世へ伝えていく

場所と機会がないのは当人にとっても、社会にとっても損失だと思うのだが・・・。

 

学校がタダでスポーツを指導・運営するから、

一部の特殊な例を除き、スポーツ競技を専門的に指導・運営する会社が育たない。

「スポーツで生計を立てる」ことが不可能な社会になる。

そのようにして部活動が民業を圧迫しているという視点もある。

 

せいぜい大手スポーツ用品店が部活生対象にグッズで儲けているくらいだろう。

少子化で今後はより厳しさが増すだろうが。

 一見華やかに見えるスポーツジムなども

インストラクターは派遣契約だったりして内情は厳しいようだ。

保護者にきちんと経済的負担をしてもらう前提で、

学校の部活動を民間に開放すればかなり大きな市場となり、

経済効果も大きいはずだが、生徒指導の観点で「市場開放」は難しいだろう。

 

部活動命&勉強はやってない、で育ってきた若者たちの多くは

長時間を費やして得た運動スキルで将来を切り開くことはできない。

せいぜい、趣味に生かすか職場のレクリエーションでヒーローになるくらいだろう。

何らかの形で部活動を「大々的に」民間に委託できれば

指導者だけでなく、選手の練習相手として

多くの競技経験者が必要とされて活躍の場が生まれるはずだ。

 

他人のタダ働きに大きく依存したシステムは

許されない。

何しろ部活動は民業を圧迫している可能性もある。

と、教員が声をあげても文科省は動かない。

 

数万人の先生たちが

「部顧問をする・しないの選択肢をください」

と署名しても

「複数顧問で負担を軽減してみましょう」

なんて答えが返ってきただけだ。

 

複数顧問制なんて何年も前から行われているし、

部活数を減らさない限り、逆に負担が増えるだけだ。

「選択肢をくれ」と要望しているのに

「数人でやればいいじゃん」という答えは

そもそも答えになっていない!

 

部活動は超巨大市場である。

人口減少社会における、残された数少ない市場だ。

ぜひとも、どこかのスポーツ関連企業が、

部活動の「市場開放」を働きかけてほしいものである。