「部活問題」を考える

「部活問題」「ブラック部活」を中心に、現役高校教師Kが学校現場の問題点を考えていくブログです。

私の部活動指導歴(3)「ある日突然、素人が強豪チームの主顧問に」

主顧問がガンガンに指導していたため、私ができることはほとんどなく、事務仕事を手伝っていた。副顧問とはいえ、練習に第三者が来るのは嫌がる顧問だったので練習に顔を出すことは全くなかった。緊張感みなぎる練習場に素人が来ても迷惑だったのはよく分かる。競技歴が無いのだから自分ができることをやればいいのだと思っていた

 そのような日々を過ごしていた新規採用から数年目の春。私は初めて担任した生徒たちを持ち上がり3年担任になることが決まった。進学・就職を支援する大事な学年である。春休みからとても緊張していた。そんなある日、定期人事異動が発表され主顧問が転勤することになった。

 もちろん次の主顧問を決めなければいけない。私は校長と教頭に呼ばれた。

「来年の○○部(の主顧問)をお願いしたいんだけど。」

「私は競技歴がありませんから保護者が納得しないと思います。今年も中学トップレベルの生徒に声をかけて引っ張ってきていますよね?

 

 そう、強いチームを作るためには良い選手を呼ぶことも必要だ。前顧問は翌年も自分が指導するつもりで生徒たちを呼んでおり、入試に合格していた。合格認定を出したのは他ならぬ校長だ。生徒を学校へ呼んだ以上、卒業まで指導する道義的責任があるはずだ。校長にどれほどの人事権があるか知らないが、そこらへんの事情は考慮しての人事異動であったと「思いたかった。」

 

「(前顧問の)代わりになる人は新しく来ないのですか?」

「そこらへんは県(の人事担当部署)は考慮しないんだよ」

 

 他人事のような管理職の言葉に驚いた。インターハイだ、優勝だ、と全校集会で表彰するたびに褒めちぎっていたのにこのザマである。数十名の優秀な生徒が一瞬にして路頭に迷うことになるのに!

 教師の転勤は公立校の宿命とはいえ、全国レベルの選手を「既に集めた」のに、素人を監督につけようとしているのだ。自分が保護者だったら納得できない。私は続けた。

 

初めての3年担任をしながらインターハイ出場を目指す部活も指導するんですか?」

 

 さすがにこれには校長も教頭も黙った。ベテラン教師でも3年担任就任は嫌がる。仕事量が多い上にデリケートな仕事が多いからだ。進路指導、教科指導と進路先への書類作りで毎日夜遅くまで学校で仕事をするのが通例だ。人生に大きく影響する1年だ。無責任なことは許されない。

 この学校には他にも県大会上位の部活動チームがあったが、それらのチームの顧問は全て「副担任」であった。「部活指導が大変だから担任はしない(お願いしない)」のが暗黙の了解だった。もちろんこれにはこれで問題があるが、それはまた別の機会に書いてみたい。

 

 私一人があがいてみても何も変わらず、そのままなし崩し的に強豪チームの主顧問となった。前述のように強豪チームゆえ誰も副顧問にすらなってもらえなかった。見かねた生徒指導主任が副顧問になってくれたが、実質一人きりで顧問をすることとなった。その競技をやったこともない、ルールも知らない素人がインターハイを目指すチームの監督になったのだ。

 

私「校長先生、これは職務命令ですよね?職務命令なら引き受けます。」

 

 後日、保護者とのトラブルになることが大いに予想されたので校長の言質を取っておこうと思った。職務命令なら校長にも命令した責任がある。私に瑕疵がない限り校長を巻き込むことができると考えた。自分の希望で部顧問に就任した形になるのは避けたかった。当時はまだ部顧問を職務命令できるかどうかはグレーなところだったが・・・。

 

校長「そう思ってもらって構わない。

 

 日本語はなんとも便利な言葉だ。こんな便利な表現があるとは!校長は明言を避けたつもりかもしれないが、私はもう一押しした。

 

私「では、職務命令をいただきましたので、○○部の顧問を引き受けます。」

 

そう言って校長室を後にした。きっと私の目が座っていたのだろう、校長はニコリともしなかった。