「部活問題」を考える

「部活問題」「ブラック部活」を中心に、現役高校教師Kが学校現場の問題点を考えていくブログです。

「部活動活性化!」「文武両道!」と叫ぶ学校の実態

最近の学校は、以前に比べてやけに部活動を推奨する。

「全員加入」

「部活動加入率○○%目標」

「文武両道を目標に〜(以下略)」

 

生徒の自主的な活動である(はず)の部活動を

自治体あげて「全員加入」と言っているところもある。

 

「自主的な活動」への参加を強制するなんて

かなり違和感を感じるのだが、

部活動大好きな人(大人)たちは

「部活動はこんなにいいからやるべきだ!」と

子供達に「強制」かつ「強要」している。

 

それは教員に「強制的に」部顧問に任命し、

ボランティアであるはずの部活指導を

勤務時間外に強いている現状に似ている。

 

教員に無理強いしているのだから、

生徒にも無理強いするのだ。

 

そして生徒に「部活やれ!」と言う以上

教員が付き添わないわけにはいかない。

このようにして多くの生徒とほぼ全ての教員が

「部活動」に駆り出されることになる。

 

よく家に宗教の勧誘に来られる方たちがいらっしゃるが

部活動の強制はそのような宗教勧誘と似ている。

「これ(部活or宗教)はいいことなのだから皆さんやるべきですよ!」と

本人たちが信じ込んでいる。

いわば「善意の押し売り」なのだ。

あくまで善意だから、本人たちはそれによって迷惑をこうむっている人がいることに気づかない。

 

今まで勤務してきた学校は全て

「部活動活性化」「文武両道」をモットーとする学校であった。

そういう学校を選んで勤務したわけでなく、

地域・校種を問わずほぼ全ての学校が

「部活動」を目玉の一つにしているのだ。

だからどの学校に赴任しても

何は無くとも「部活」の連呼である。

 

しかし少なくとも公立校の場合、

この「部活動活性化」というモットーは

実質的に何の意味もないし

何かの特典をもたらすわけではない。

 

4月最初の職員会議で校長が

「部活動を盛んにしていきましょう」と宣言し、

学校パンフレットに「文武両道」の文字が載るだけだ。

 

特別に予算が増額されるわけでもなく、

優秀な指導者が集められるわけでもない。

 

公立学校だから元々予算は少ない。

以前書いた通り、人事異動で「部活動の顧問歴」が

考慮されることも少ない。せいぜい野球くらいのものだ。

 

当たり前である。

「学習時間終了後の自主的な活動」なのだから。

そんなところに予算と人材を集中的に投下するなんて

公立機関で行うことが許されるはずがない。

 

一般企業で「宣伝に力を入れよう」となれば

そのための予算を配置し、人材を配置するであろう。

そうでないとその部署の活性化は望めない。

経営戦略とは「カネとヒトをどう配置するか」が重要な要素の一つだ。

もう一つ付け加えるなら「どこを削るか」も大事だ。

 

しかし公立学校における

「部活動活性化」という戦略において

「ヒトとカネ」が動くことは

ほとんどない。

 

私が見てきた限り、「部活動大好き」校長は

「特別な予算は持ってこない。指導者も呼んでこない」状態のままで

「部活動の一層の活性化を目指しましょう」と言っていた。

 

もちろん全教員は現状に応じて最善の努力はしないといけないが、

それにしても予算も人材もなしで「部活動を活性化せよ」とは

あまりに無責任ではないか?

 

「何も後押しはしないけど、

 教員も生徒もとにかく部活やれ。」

言っているに等しい。

 

・指導に当たるのに必要な経費はすべて各顧問の自腹

・勤務時間外に指導する教員への時間的・金銭的補填は全くない

 

そんな状態で教員は部顧問をやっているのに

一層力を入れよ、と命じているのだ。

 

私の祖父は太平戦争時に南方戦線にいた時のことをよく語ってくれた、

何しろ敵と戦えと言われても、

 食料はもちろん、弾も送られてこない。

 逃げるか降参する以外にできることはなかったわな。

 自決しようにも弾も手榴弾も無いんだから。」

 

「文武両道」を叫ぶ学校の多くが、

大戦末期の旧日本軍のような戦略なのだ。

 

「物資も無い。人もいない。

 お前たちの忍耐と精神力で

 なんとかしろ。」

ということなのだ。

 

「部活動に力を入れている学校」の多くがこのような実態だ。

 

言いかえよう。

公立学校では「部活動活性化」を看板に掲げても

特に予算とヒトを獲得してくる必要はない。

そもそも獲得できないことが多い。

教員はほぼ全て「それが当たり前」だと思っているから文句も言わない。

だから学校(と教育行政)は

「部活動活性化」を乱発する。

だって「言うだけならタダ」だからだ。

 

しかも「特別な手立てや対策」もほとんど要らない。

部下の教諭が時間外も休日も指導をしてくれるから。

 

「部活動活性化」と叫ぶだけで

部活動が盛んになり、

学校に活気が出ると信じ込んでいる。

魔法の呪文を唱えているようなものなのだ。

 

これが「文武両道がモットー(公立校)」の実態だ。

 

一般社会の話で例えてみよう。

「この車は燃費がいいのが売りです。」

となれば、その車には研究予算が投じられ

何らかの燃費向上対策が施されているはずだ。

そうでなければ「燃費がいい」と言える根拠にならない。

それを信じてユーザーは車を買うだろう。

燃費がいいことを期待して車を買うだろう。

「燃費がいい」と宣伝しながら

「予算も投じられていない」

「燃費対策の研究者も割り当てられていない」

となればどうだろう?ユーザーは何と思うだろう?

ありふれた言葉で言えば

これを「嘘」というのだ。

 

以前勤務していた学校で管理職が

「幾つかの部を"強化指定部"に認定したい」と言い出した。

聞いていた職員みんなが驚いた。

「強化指定して補助する金なんてあるのか?まるで私立高校みたいだ。」

とみんな疑問に思ったのだ。

 

しかし内容はなんてこと無かった。

「特別なことは何もない。お金も関係ない。

 熱心に指導する顧問がいて、比較的熱心に取り組んでいる部を

 ”強化指定”することで部活動が盛んなイメージを打ち出したい。」

という理由であった。「強化指定」と言うだけならタダだ。

どうやら他の公立校が始めたらしく、それを真似たいとのことだった。

 

普通なら「強化指定」を受けていると聞けば

金銭、人材、環境的に優遇されているイメージを持つだろう。

そのイメージを生徒募集につなげようと言うのだ。

イメージ戦略は大事だが、中学生に対して

「ほとんど何もしていないのに、

 何かしているように誤解させる」

 と言う戦略は果たして道義的にどうなのか?

 

もし中学3年生のお子さんがいらっしゃる方が

このブログを見てくださっていたらご注意いただきたい。

「部活動が盛んなイメージ(特に公立校)」に騙されてはいけない。

「文武両道」とか「部活動活性化」の文字を見たら要注意だ。

「特別な予算的、人材的措置がなされているのか?」と

学校説明会などで是非質問していただきたい。

歯切れの悪い回答だったり

「練習時間に配慮した時間設定をしている」程度の回答だったら

その学校も「言うだけならタダだから言っている」に過ぎない。

リップサービスで「部活動」を持ち上げているだけだ。

 

優秀な指導者がいても安心してはいけない。

公立校には転勤がある。

お子さんの卒業までその指導者が在籍予定かどうかを

必ず確認して入学を決めていただきたい。

 

そしてどうか、部活動で学校を決めるのではなく、

学科の教育内容や学力を伸ばせる学校かどうか

で高校を選んでいただきたい。

ごく一部のトップアスリートを除き、

部活動に人生の選択を預けるのは得策ではない。

部活動は高校3年の1学期までで終わってしまう。

それから先の人生の方がはるかに長く重要である。

どんなに部活動が大好きでも、冷静に長い目で

人生を見据えてほしい。

部活動を取り上げても「何かが残る」人材にできる学校が

本当の「文武両道」の学校である。