「部活問題」を考える

「部活問題」「ブラック部活」を中心に、現役高校教師Kが学校現場の問題点を考えていくブログです。

部活動の問題点 その4 「スポーツ産業の発達を阻害」

「(子供が)土日家でゴロゴロするくらいなら

 部活でもしてくれた方がいい」とおっしゃる保護者は多い。

私も同意する。確かにその通りだ。

 

しかし、ここにも落とし穴がある。

保護者の立場としては部活動はありがたい。

何しろ

土日もタダで先生が子供の面倒を見てくれるからだ。

 

他人がタダで子供を預かってくれるなんて

こんなありがたいことはない。

私の近所のピアノ教室は週一回1時間のレッスンで一月6000円の月謝だ。

 

公立の保育園に我が子を通わせた時は一月3万6千円であった。

1日あたり1500円である。この計算で土日1日子供を預けると

一月12000円はかかる。

 

他人に子供の面倒を見てもらう(指導もしてもらう)のには人件費がかかるのが世間の常識である。

しかし、教員は実質的に部活動指導に対しては

(ほぼ)タダ働きである。

 

だから部活動は(保護者にとっても)最高である。

「先生に人件費を払う必要はない」のだから。

そりゃあ保護者も「部活をしなさい」と子供に言いたくなるはずである。

日本全国の学校で「部活動推進」が行われる原因の一つだろう。

人件費がかかる、となれば大抵の学校と自治体が慎重になるはずだ。

部活動は人件費がタダみたいなものだから、

学校に特色を出そうとして

何の気兼ねもなく「部活動活性化!」を言い出す。

どの学校も「部活!部活!」と言っているので

逆に特色がなくなってきているのは皮肉だ。

 

しかしタダより怖いものはない。

部活動を教員が「タダ」で運営することには

多くの人が気付いていないデメリットがある。

 

部活動がタダだから「スポーツ指導を受けるのは無料が基準」という社会の雰囲気が形成され、「スポーツ指導にお金を払う」という意識が希薄な社会になってしまっている。

スポーツを指導してもらう、ことに対してお金を払うという感覚がないのでスポーツに関わる業界が成長しない。

 

スポーツで食っていくことができない社会になり、

体育を学んだ人の多くが体育教師になる以外の道がない。

体育教師になれたらまだマシではあるが・・・。

 

その競技へ専門的に取り組み、

全国レベルの競技力を身につけた選手であっても

学校の先生にならない限り「指導者」として活躍できる人は限られている。

 

長年にわたり身につけたスキルを後世へ伝えていく

場所と機会がないのは当人にとっても、社会にとっても損失だと思うのだが・・・。

 

学校がタダでスポーツを指導・運営するから、

一部の特殊な例を除き、スポーツ競技を専門的に指導・運営する会社が育たない。

「スポーツで生計を立てる」ことが不可能な社会になる。

そのようにして部活動が民業を圧迫しているという視点もある。

 

せいぜい大手スポーツ用品店が部活生対象にグッズで儲けているくらいだろう。

少子化で今後はより厳しさが増すだろうが。

 一見華やかに見えるスポーツジムなども

インストラクターは派遣契約だったりして内情は厳しいようだ。

保護者にきちんと経済的負担をしてもらう前提で、

学校の部活動を民間に開放すればかなり大きな市場となり、

経済効果も大きいはずだが、生徒指導の観点で「市場開放」は難しいだろう。

 

部活動命&勉強はやってない、で育ってきた若者たちの多くは

長時間を費やして得た運動スキルで将来を切り開くことはできない。

せいぜい、趣味に生かすか職場のレクリエーションでヒーローになるくらいだろう。

何らかの形で部活動を「大々的に」民間に委託できれば

指導者だけでなく、選手の練習相手として

多くの競技経験者が必要とされて活躍の場が生まれるはずだ。

 

他人のタダ働きに大きく依存したシステムは

許されない。

何しろ部活動は民業を圧迫している可能性もある。

と、教員が声をあげても文科省は動かない。

 

数万人の先生たちが

「部顧問をする・しないの選択肢をください」

と署名しても

「複数顧問で負担を軽減してみましょう」

なんて答えが返ってきただけだ。

 

複数顧問制なんて何年も前から行われているし、

部活数を減らさない限り、逆に負担が増えるだけだ。

「選択肢をくれ」と要望しているのに

「数人でやればいいじゃん」という答えは

そもそも答えになっていない!

 

部活動は超巨大市場である。

人口減少社会における、残された数少ない市場だ。

ぜひとも、どこかのスポーツ関連企業が、

部活動の「市場開放」を働きかけてほしいものである。